大人になっても、ずっと好きでいられたら素敵だと思います。でも、お父さんって、ときには厳さがうっとうしかったり、思春期には理由もなく嫌いになったりする。大人になって疎遠になったり、特に同性だとなんだか付きあいにくくなったりもする。お父さんって、つらいなあ。せめて、好きだったお父さんのことを思いだしてあげましょう。そしたら、今度会ったときに、やさしい顔をできるかも知れない。もう亡くなっているなら、いい供養になるかも知れない。そして、自分がお父さんになっているなら、子供に楽しい思い出を増やしてあげられるかも知れない。
[ぼくの場合]
腕にぶらさがるのが大好きでした。厳しい父だったけど、このときは父も楽しそうでした。最後の「ぶらさがり」をよく覚えています。小学校1年生になったばかりのとき、いつものようにぼくは父の腕にぶら下がりました。ところが父は、ぼくを支え切れずに落としてしまいました。そのとき実は、ぼくは腕を軽く骨折したのですが、ぼくは我慢して平気な顔をして、次の日学校に行って、そして帰宅して「学校の校庭で転んで腕が痛い」と言い、病院に行ったのでした。父は「本当は、きのう落ちたときにやったんだろう」と言いましたが、ぼくは「学校で転んだ」と言い張りました。それ以来「ぶらさがり」はやっていません。ぼくはいま、「最後のぶらさがり」を骨折という事件によって鮮明に思い出せることを、よかったと思います。